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  • 執筆者の写真MIwa Hamada

絵本のこと 〜スイミーに込めたレオレオニの想い〜



『レオ・レオーニ 希望の絵本を作る人』

松岡希代子氏著


この本によると、

レオレオーニが本当の意味で物語絵本として成功した著作は4冊目の絵本「スイミー』(1963年)だということです。


この作品で初めて「読者」を意識し、絵本づくりを通じて、自分の子供時代の思い出を深く分析し、向かい合うようになっていきました。


面白いのは、スイミーのストーリーが実際にレオが目にした魚たちの行動によるものだということです。レオ一家が、休暇で行ったマサチューセッツ州のある島での実体験。

小さな魚がたくさん泳いでいるのが見えました。初めは魚たちがぐるぐる自由に動いていましたが、突然大きな音がした時、小さな魚たちがある一匹を中心にして集まり、皆で1匹の大きな魚の形を作ったかと思うと、一斉に海の底に沈んでいったそうな。その体験が数年後、彼の代表作の絵本と昇華したのです。

「小さな魚たちが団結して大きな魚を撃退する」お話。そんな内容だと私自身は記憶しています。

しかし、この絵本の趣旨は読者が思っているものとは、実は少し違っているようです。


実は私も、「一致団結して、協力し合えば大きなことができるんだ」というメッセージを伝える絵本なのだと思っていました。が、実はこのお話で最も大事なところは別のところにあるというのです。

実はスイミーという一匹の黒い魚が「僕が目になろう」と心を決めるところだそうです。

主人公のスイミーは、他の小魚とは違う。そんな異分子の「僕」が「目になろう」という。

他のものとは異なっている、そんな自分にしかできない役割を担うという決意表明をすることにアーティストとしてのレオの気持ちが強く込められているようです。


人にはそれぞれの個性と役割があるということ、そして、芸術家として他のものが見えないものを見ることのできる人間がいるということを、レオは伝えようとしている、と著者は説明しています。そして、もう一つ忘れてならないのは、小さなスイミーが自分の心の中に大きな魚のイメージを持つことができたということです。イメージが持てるということはスイミーに与えられた特権という訳です。スイミーと同様に、アーティストは心の中に何か独自のイメージを持ち続け、創作し続ける役割を背負っていますよね。


きっと、レオ・レオーニはスイミーを自分自身になぞらえたのでしょうね。


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